誤嚥性肺炎は、「食べる楽しみ」を奪う病気
命をも奪う病です。
何度も誤嚥性肺炎を繰り返すと、
命を守るために、「食べること」ができなくなります。
すぅさん!!!
父が、また、誤嚥性肺炎で入院しました!!
嚥下食を家でも出していたのに。。。
嚥下食でも、もう父は飲み込めないそうなんです。
「食べること」が、大好きだったんです。
もう、食べられないなんて。
お父様、誤嚥性肺炎に繰り返しなってしまったんですね。
誤嚥性肺炎は繰り返す病気なんですよ。
「食事が食べられない」と言われてしまうと
ショックですよね。
医療従事者は、
お父様の「命を守るために」
口からは、安全に食べることができないと
判断されたと思います。
口から食べる以外の栄養を摂る手段についてお話しますね。
① 繰り返す誤嚥性肺炎は、「命を奪う」病気です
誤嚥性肺炎とは、喉の機能=「飲み込みの機能」が落ちてしまった人がなる肺炎。
飲み込みの機能(嚥下機能)の低下は、軽症から重症まで程度があります。
(嚥下障害、嚥下機能障害とも言います)
飲み込みの機能低下が、「重症」になると、安全に口から食事を摂ることができなくなります。
飲み込みの機能(嚥下機能)を検査する方法は、いくつかあります。
確認してみましょう。
飲み込みの機能のスクリーニングテスト
- 水飲みテスト(MWST)
ごく少量の冷水を口にして、飲み込みができるのか、むせがあるのか無いのか、喉に残っていないのかを評価するテストです。
誤嚥性肺炎と診断された方や、高齢で誤嚥の疑いがある方に、食事が安全に取れるのかを判断するために実施します。 - 反復唾液嚥下テスト(RSST)
嚥下反射(「おえっ」っとするイメージ)が起こるのかどうかを、テストします。
看護師や、言語聴覚士が、喉の奥に、手を入れて、嚥下反射が起こるのかテストします。
一般的に、「喉に手を突っ込まれたら、オエっとする」と思いますが、
嚥下機能が重度に低下した人は、その「オエっと」すら起きません。
画像による飲み込みの機能の検査法
- 嚥下内視鏡検査(VE)
鼻から細い内視鏡カメラを喉まで挿入して、飲み込みの動きを、直接見る検査です。
直接、喉の動きを内視鏡カメラで観察するので、食物や唾液などが、
どのように飲み込まれているかを観察できます。
安全に飲み込むことができる、食事の形態や、姿勢、ごっくんとする回数などを
決めるために役立つ検査です。
喉に残り、飲み込まれない状態を確認した場合には、
「口から食べることは難しい」と判断されます。 - 嚥下造影検査(VF)
硫酸バリウムなどの造影剤を口にして、
レントゲン透視下で、どのように飲み込まれるのかを観察します。
飲み込みの様子・喉の動きは、動画として記録されます。
飲み込んだものが、食道に行くのか、気管(肺)にいくのかを確認できます。
そのため、嚥下機能の状態が正確に判断できる検査法となります。
嚥下機能障害の重症度を確認でき、
検査をすることで、誤嚥しにくい食形態、安全に食べることができる姿勢を決めるために役立ちます。
嚥下機能の段階を評価するときは、
初めに、スクリーニングテストを行います。
スクリーニングテストの結果により、画像による検査(VE・VF)をする・しないが判断されます。
こちらの動画を見てもらうと、検査のイメージが湧くと思います。
お時間ある方は、ぜひ、見てみてください。
画像による検査法は、専門医(耳鼻咽喉科医、神経内科医、嚥下リハビリを専門としている医師)が行います。
入院している病院で行うことができるのかどうかは、主治医や看護師と相談してみましょう。
近くの専門医を探したいときは、「日本耳鼻咽喉科頭部外科学会」のサイトを見てみましょう。
下にリンクを貼っておきますね。
日本耳鼻咽喉科頭部外科学会の「一般の方へ|嚥下」のページも読んでみてください。
② 繰り返し誤嚥性肺炎を起こしている方が「安全に口から食べる」ことは、難しいと言われたら
誤嚥性肺炎は繰り返す病気です。
なぜ繰り返してしまうのか。
それは、人は皆、歳を重ねるごとに、飲み込みの機能が、落ちていってしまうからです。
誤嚥性肺炎で入院した場合、
前に述べた「水飲みテストや飲み込みの画像検査」を行うことで、
嚥下機能の状態を評価してもらえると思います。
その結果、「安全に口から食べられない」との評価が下された場合、
患者さんとご家族は、辛い選択をしなければなりません。
その選択肢は「代替栄養」と呼ばれるものになります。
- 誤嚥することを覚悟して「口から食べる」
- 鼻から細い管を入れて栄養を摂る(鼻腔栄養)
- お腹に穴を開けて胃に直接栄養を入れる(胃ろう)
- 点滴で水分を摂る(末梢静脈栄養)
- 点滴で栄養を摂る(中心静脈栄養)
医療ソーシャルワーカーとして、たくさんの人の
「口から食べる以外」の方法について選択する場面に
立ち会ってきました。
どの選択肢にも「メリット」と「デメリット」があります。
初めてのことで、戸惑う方も多いです。
なかなか、決断できない方もいます。
ええええ!!!
すぅさん、ものすごく戸惑っています!!
どうしたらいいんだろう・・・。
正直、「口から食べられない」なんて、父に言えません。
でも、肺炎になって、命の危険に晒されるのもつらい。
どうしたらいいんですか?どうにかなりませんか?
いきなり、「口から食べる」以外の選択を迫られても
困りますよね。
戸惑う気持ちはわかります。
代替栄養の選択肢の「メリット」「デメリット」を
理解して、お父様とご家族とで、
検討されるのが良いかと思います。
日本老年医学会の「高齢者ケアの意思決定プロセスに関わるガイドライン」のページも読んでみてください。
③ 誤嚥性肺炎に繰り返しなった場合の医療従事者とのコミュニケーションを知っておこう
誤嚥性肺炎で入院を繰り返している場合、
医療従事者と、できるだけコミュニケーションをとりましょう。
同じ病院で入退院を繰り返している場合には、
カルテ記録や、リハビリ記録で、
前回の誤嚥性肺炎の状況を把握してもらえます。
違う病院であったとしても、以下のことを伝えましょう。
- 家で食べていた食事の形態(おかゆ、柔らかめのものか)
- 水分にとろみをつけていたのか、どれぐらいの量使っていたか
- むせ込みの状況
- 食事の量(食べる量が減っていた、あまり食べたがらないなど)
入院も初めに、看護師から、基本情報を聞かれる時に、
伝えることができると良いでしょう。
よくある話として
「前の入院でとろみをつけるように言われたが、本人が嫌がってつけていない」という
エピソードも、誤嚥性肺炎の治療に有用な情報となります。
緊張するかもしれませんが、
ぜひ伝えましょう。メモに書いておいて、渡すことも「アリ」です!
まとめ
今回は、誤嚥性肺炎を繰り返し起こしている方に向けて、
「嚥下機能の評価の方法」「代替栄養の選択肢」「医療従事者とのコミュニケーション」について
お伝えしました。
「口から食べられない」ことは、辛い現実です。
高齢者の方は、どなたも誤嚥性肺炎となる可能性を持っています。
だからこそ、「いつか」のためにぜひ知っておいてほしい情報をお伝えしました。
すでに、その辛い現実が目の前にある方は、
ひとりで悩まず、主治医、看護師や言語聴覚士と相談しましょう。
すぅさん、ありがとうございます。
まだ、つらくて、現実をしっかりみれていません。
父も体で、どの「代替栄養」が選べるのかを
主治医との面談の場で聞いてみます!
またわからないことがあったら、
教えてくださいね!
お役に立てて、何よりです。
入院中の主治医、看護師や、言語聴覚士の方に相談してみてください。
緊張するかもしれませんが、
頑張ってくださいね!
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